第12章 壊れてしまえば
しかし…いくら待てども高杉さんの唇が重ならない。
一体何を躊躇っているのか。
親友であり仕事仲間でもある大好きな“サクちゃん”の“恋人だった女”など抱けないとでも言うのか。
正直、高杉さんはそんな事を気にするタイプには見えないが…。
そっと目を開け、高杉さんの顔を見つめた。
覚悟は出来ている。
そう訴えるような私の瞳に高杉さんは気付いてくれるだろうか。
「やっぱりやめた。」
「…え?」
「今日はもう眠たいし。」
「…でも。」
「ベッド使って良いから。」
そう言って高杉さんは私の手を振りほどき、バスルームへと消えて行った。
リビングへと残された私はその場に座り込む事しか出来ない。
バスルームからはシャワーの音が聞こえてきた。
眠たいなど嘘だ。
私は…拒絶されてしまったのだ。
ゆっくりと立ち上がり、コロが眠る寝室へと向かう。
私は…一体何をしているのだろう。
自分の不甲斐なさに怒りさえ込み上げた。