第12章 壊れてしまえば
それならば…身体はどうなのだろうか。
身体に染み付いた恋人とのセックスを忘れるために他の誰かとセックスをし、上書きをする。
そうすれば…私も佐久間さんとのセックスを忘れられるのだろうか。
身体に刻み込まれた佐久間さんを…消し去ってくれるのだろうか。
例えば…今目の前で眠る高杉さん。
高杉さんの身体で、佐久間さんを忘れさせてはくれないだろうか。
私の気配に気付いたのか、高杉さんはまぶたを擦りながら目を覚ました。
「ごめん、寝てた。」
「いえ。」
「俺のTシャツ似合ってるじゃん。大きいけど。」
「貸して下さってありがとうございます。」
「良いんだよ。」
大きく伸びをする高杉さんの膝に手を乗せた。
まるでご飯が欲しいとせがむ犬のような格好になってしまったが、不慣れなのだから仕方ない。
私の行動を不可解に思ったのか、高杉さんは首をかしげながら私の頭をクシャクシャと撫でる。
「駄目だよ、そんな事しちゃ。
キスしちゃうよ。」
高杉さんはフフッと笑うと、私の唇を親指でなぞった。