第12章 壊れてしまえば
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髪を乾かしリビングへと戻ると、高杉さんがソファーでうたた寝をしていた。
付けたままのテレビ。
腕を組みながらソファーの背もたれに身体をあずけている。
こんな無防備な姿を見ても、私の心がときめく事はない。
the IVYのボーカリストとしての高杉さんには魅力を感じているが、正直…男としての高杉さんには興味すらなかった。
不思議なほど…異性を感じない。
例えるなら、年の離れた兄のような存在だ。
ソファーの横にしゃがみ込み、高杉さんの寝顔を見つめた。
中性的な美しい顔立ち。
ふと、以前テレビのバラエティー番組で女性タレントが言っていた言葉を思い出した。
“恋の傷を癒すのは新しい恋だ”と。
私には理解出来ないとその時は思った。
もしこの言葉が本当ならば、恋人というのはいつでも“交換可能”な存在になってしまう。
“上書き”をするように恋をする。
便利ではあるが、気持ちはついてこないだろう。