第12章 壊れてしまえば
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湯気で煙るバスルーム。
浴槽に浸かりながら、水滴の滴る天井を眺めていた。
コロはまるで自分の家のように、高杉さんのベッドで丸くなっている。
もともとコロは高杉さんにもよくなついていた。
あれだけ頻繁に家に出入りしていたのだから当然か。
高杉さんの作ったカルボナーラは、どこか懐かしい味がした。
それが母の作るカルボナーラの味に似ている事に気付いたのは、食べ終えた食器を洗っている時だった。
母を思い出し、胸の苦しみは増すばかり。
私は…これから一体どうすれば良いのだろう。
いくら自問自答を繰り返してみても正しい答えを導き出す事が出来ない。
そもそも正しい道から外れてしまった私達は、これから一体どこへ向かうのだろうか。
高杉さんと同棲相手のように…あの日の亮太と私のように、あっけなく終わりをむかえるのだろうか。
それとも…。
再び、激しい頭痛と吐き気に襲われた。
強い拒否反応。
私の心が、血が、肉が、骨が…佐久間さんとの関係を拒絶する。
目眩がする。
まるで地べたを這うように、私は急いで浴槽から出た。