第12章 壊れてしまえば
「あの…」
「俺、聞かないから。」
「え?」
「何か理由があったんでしょ?
家出したの。」
「…はい。」
「話した方がスッキリするなら聞くけど、話したくないなら聞かないよ。」
高杉さんはパスタを茹でながら、いたずらに笑った。
「お礼ならキスがいいな。」と、可愛いらしく首をかしげなからいつものように冗談を言う高杉さんに、私も思わず笑ってしまった。
「俺はいつでもウェルカムだよ。」
「…やめて下さいよ。」
「いや、両手広げて待ってるからね。
先生の事。」
パスタをゆで終え、湯切りをしながら高杉さんは愉快そうに笑う。
いつもなら嫌悪感しかなかった高杉さんの冗談も、今はとても救われる。
今は…ひとりになりたくない。
許されるのならば、今日はここで眠りたい。
勝手だとは思うが頼らせて欲しい。
「出来たよ。」
白いお皿に盛り付けられたカルボナーラを、高杉さんはテーブルへと運んでくれた。
「美味しそう。」
「でしょ?ご褒美のキスは?」
得意気に笑う高杉さんを…今は、今だけは頼っても良いだろうか。