第12章 壊れてしまえば
「出て行ったんだよね。」
「え?」
「同棲してたの。
二人と“一匹”で。」
「…女性ですか?」
「そう。猫好きの女子アナ。
何か俺といるとみんなダメになっちゃうらしいよ。
ツアーから戻ったらもういなくなってた。」
そう笑いながら話す高杉さんに胸が痛くなった。
恋人という関係はこうも簡単に解消出来るものなのか。
あまりにも似通った状況。
しかし、高杉さんの場合はただの“男”と“女”。
私と佐久間さんの関係とはまた違う。
“辛い”という感情に優劣をつける訳ではないが、私達の育んできた愛はとても“グロテスク”だ。
「…笑いながらする話じゃないですよ。」
「泣きながらした方が良かった?
俺が泣いたら、先生が慰めてくれる?」
「…それは。」
「先生が優しく抱いてくれるなら、いくらでも泣いて甘えるけどね。」
高杉さんはいつものように私をからかう。
私はペットボトルのキャップを開け、水を一口飲み込んだ。
少し…冷静にならなければいけない。
そう自分に言い聞かせた。