第12章 壊れてしまえば
携帯電話の電源を入れると、5件の不在着信と1件のメッセージが残されていた。
相手は…佐久間さんしかいない。
何も告げずに出て来たのだ。
優しい佐久間さんの事。
きっと必死で私とコロを探しているに違いない。
しかし、今はそんな佐久間さんの優しさが辛い。
留守番電話を聞く事も、メッセージを開く事も出来ない。
激しい頭痛と吐き気に襲われる。
もう立つ事すら出来ない。
私はゆっくりとその場にしゃがみこんだ。
その時だった。
手の中の携帯電話が鳴り出した。
ブルブルと震える振動。
思わず手から滑り落としてしまいそうになる。
相手は…佐久間さんだろうか。
どうしても、今は佐久間さんと話をする気にはなれない。
鼓動を早める心臓はもはや恋などではない。
強い拒否反応。
私の心は…私の身体は、佐久間さんという存在を激しく拒絶しようとしているのだ。