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【年上の男】 R18 ※加筆&修正中

第12章 壊れてしまえば






もうずいぶん歩いただろうか。

履き慣れない靴を履いていたせいか、かかとの皮がめくれあがり、ストッキングには血が滲んでいた。

ペット用のキャリーケースの中からは、コロのすすり泣くような声が聞こえる。

とりあえずは今夜眠れる場所をさがそう。

ペットと泊まれるホテルが近くにあればいいのだが。



私にはこんな時に頼れる友人もいない…。

いや、本当は愛美先生に頼りたかった。

しかし、愛美先生には佐久間さんの存在を明かしてはいない。

そもそも愛美先生には同棲している恋人がいる。

「私達も同棲する事にしたの。」

そう眩しい笑顔の報告を受けたのは、つい2週間前の事だ。

いきなり押し掛けても迷惑でしかないだろう。



ふと立ち止まり、空を見上げた。

ビルの谷間からわずかに見える藍色の空。

全てを塗り潰すかのよう。

いっそ、私の身体ごと葬り去ってほしい。

生きる事をやめたくなる。

こんな気持ちは久しぶりだ。



いや、現実逃避をするのはもう少し後にしよう。

今は現在地から近いホテルを探そう。

電源を落としたままの携帯電話。

相変わらず手の震えは収まらない。






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