第12章 壊れてしまえば
そして…
物心ついた頃から実家にテレビが無かったのは…当時数えきれないほどの音楽番組に出演していたアイヴィーの姿を見たくないという母の心理からだったのではないか。
当時のアイヴィーはテレビドラマの主題歌やCM曲のタイアップも多かったと、以前愛美先生に聞いた事がある。
極端だとは思うが、テレビさえ無ければ見聞きする事はない。
それほど、母は佐久間さんを拒絶していたのだろう。
当然ながら祖父母は佐久間さんの存在を知っていたはずだ。
祖父母の家にはテレビがあったが、ついているのをあまり見た事がない。
幼い頃に一度だけ、テレビの音楽番組が観たいと祖父母の家に押し掛けた事があったが、「今日は帰りなさい」と祖父に追い返されてしまった。
全てはアイヴィーを…佐久間さんを見ないように、見せないようにするためだったのだろう。
今なら納得が出来る。