第12章 壊れてしまえば
今思えば、全て辻褄が合った。
大学進学を機に上京した母は、佐久間さんと出会い、私を身ごもった。
私を出産した頃は、まだ関係は良好であったのだろう。
しかし、それから1年…。
母は何らかの理由で私を連れ、実家のある北海道函館市へと戻った。
それはちょうど、the IVYがメジャーデビューした頃と重なる。
佐久間さんが母を捨てた。
そう考えるのが自然だ。
日本を代表するロックバンドにまで上り詰めたthe IVYのギタリストである佐久間俊二。
忙しさからか…それとも取り巻く女性関係が派手になっていったのか。
理由はどうあれ、住む世界が違ったと気付くまでにさほど時間はかからなかっただろう。
それだけは確信出来る。
なぜなら私も…感じていたからだ。
地味な高校教師である私と佐久間さん。
不釣り合いだと常に感じていた。