• テキストサイズ

【年上の男】 R18 ※加筆&修正中

第12章 壊れてしまえば


祖父の葬儀には、母の恋人であるあの男も参列していた。

弔問客を見送る私達へそっと一礼をし、帰っていった。

間近で見たのは初めてだった。

目尻の垂れた優しそうな顔立ちの男。



取越法要を終え、私は着替えもせずにすぐさま空港へと向かった。

線香の香りが漂う喪服。

さぞかし好奇の目で見られた事だろう。

しかし、今の私にはどうでも良い事だ。



佐久間さんが留守である事を確認し、マンションへと戻った。

荷物をまとめ、部屋を出る。

鍵はリビングのローテーブルの上に置いてきた。

もちろん、コロも一緒だ。



これから…私は一体どうすれば良いのだろう。



禁忌を犯してしまった。

私には…私達には強い罰が必要だ。



喪服を見にまとい、大きな荷物を肩にかけ、ペット用のキャリーケースを抱えて歩く。

行く場所が無い。

涙で視界が滲んでゆく。

時刻は午後7時。

家路を急ぐ人々の群れに逆らうかのように、あてもなく歩く。



私はこれから…どこへ帰れば良いのだろう。



私には…もう帰る場所が無いのだ。






/ 768ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp