第11章 目眩がするほど
その瞬間、ふと彼女の事を思い出した。
小松加奈。
忘れていた訳ではないが、彼女は…今日学校へ行ったのだろうか。
昨日廊下で見た彼女の後ろ姿。
追いかけるべきだったと…今さら後悔している。
後で愛美先生に連絡をしてみよう。
愛美先生ならば彼女も心を開いている。
彼女と村瀬先生の関係が噂になっていないだろうか。
そればかりが気がかりだ。
畳の上に広げたアルバムをまとめる。
こうなれば、遺影は運転免許証の写真で決まりだ。
遺影になってからも、祖父には“厳格なおじいちゃん”でいてもらうしかない。
タンスの引き出しへとアルバムを戻そうとした時だった。
タンスの奥にある茶封筒が目に入った。
A5サイズほどの薄い茶封筒。
表書きには何も書かれておらず、中身は何か分からない。
しかし、アルバムをしまっていた引き出しから出てきたのだから、その封筒の中身も写真だろうか。
新しい物ではないようだが、気になり手に取ってしまった。
もしかすると、祖父の写真かもしれない。
…私が見ても良い物だろうか。
ほんの少しの後ろめたさを感じながら、私は封筒の中身を確認した。