第11章 目眩がするほど
アルバムをめくると、そこには校庭を駆ける私の写真があった。
小学校の運動会だろうか。
紅白帽を被り、バトンを握り締めながら必死に走る姿。
毎年母が作ってくれていた、甘い玉子焼きの入ったお弁当を思い出した。
運動会の写真が数枚続き、秋に行われる学芸会の写真に変わる。
衣装を着けて踊る表情がぎこちない。
懐かしいとは思いつつも、今探さなければならないのは祖父の写真だ。
もし、写真が見付からなければ運転免許証の写真でも仕方ないとは思う。
しかし、無表情の写真よりは、少し笑顔のある写真を遺影にしてあげたい。
それは遺された者のエゴなのだろう。
せめて遺影くらいは“優しいおじいちゃん”でいて欲しい。
アルバムを数冊眺めてはみたが、やはり祖父の写真は1枚も無かった。
全て私の写真。
最後に見付けたのは高校の入学式、校門の前で母と並んで撮った写真だ。
相変わらずの無表情な私の隣で、母はどこか誇らしげに微笑んでいるように見えた。