第2章 高校教師
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リビングのローテーブルで、男は美味しそうにカレーを食べる。
そんな男の姿を、私はただキッチンから眺めていた。
とくにする事もない。
カレーを食べ終えたら男は帰るのだろうか。
男の正体、男の目的…全てが謎のまま、時間だけが過ぎていく。
“あなたは誰ですか?”
そう切り出すべきだろう。
いつまでも男のペースに巻き込まれている場合ではない。
そんな事を考えていると、ふいに男と目があった。
「一人暮らしでしょ?」
「あ…、はい。」
「きちんと料理してて偉いね。」
「…いえ。」
「偉いよ。俺、無理だもん。」
「そう…ですか。」
そう返事をしてみたものの、料理が趣味というわけではない私の食生活は質素だ。
カレーなどはまとめて作り、最低でも2日は続けて食べるようにしていた。
家族でもいれば、毎日栄養や彩りを考えて料理を作ったかもしれない。
しかし、私はいつでも一人だ。
食事を楽しむという感覚はない。
いや…今話したいのはそんな話ではない。
「食べないの?」
「え?」
「一緒に食べない?」