第11章 目眩がするほど
横たわる祖父の隣の部屋に布団を敷き、母と祖母を寝かせてきた。
これからやるべき事は葬儀屋との打ち合わせ。
お寺との段取り。
戒名。
遺影は早く決めなければならない。
明日に通夜、翌日に葬儀。
火葬場へ行き、続いて取越法要が行われる。
私がこの函館にいられるのはこの3日。
仕事は忌引きを取り、休む事が出来た。
私が祖父のために出来る事はもうあまり残されていない。
実家へ戻り、しんと静まりかえった家の中へと入る。
居間には脱ぎっぱなしのパジャマ。
隣の寝室の布団は乱れたままだ。
祖父の容態が急変したのは夜中だったと母は言っていた。
一昨日の夜から…母はここへ帰って来る暇は無かったという事だ。
奥の部屋へ行き、古いタンスの引き出しを開けた。
フィルムメーカーの名前が印字してある薄いフォトアルバムが数十冊。
どれも写真屋で現像した際にサービスで貰える物だ。
一冊につき24枚のスナップ写真が納められている。
この中から祖父の写っている写真を探さなければならない。