第11章 目眩がするほど
「母さん…少し休んで。
昨日から眠ってないでしょ?」
「うん…。
でも、これから葬儀屋さんが来るから。」
「それまででもいいから少し横になって。」
「…ありがとう。」
母に兄弟はいない。
祖父の親戚は遠く、道東の紋別市にいる。
昨日の夜から母が親戚中に電話をし、葬儀の段取りをしているのだと思う。
それに加え、祖母の心のケアもしていたのだろう。
前回会ったのは昨年末だったはずなのだが、母はひどく痩せたように見えた。
この様子ならば、経営している喫茶店もここしばらくは閉店していたのかもしれない。
母の恋人であるあの男。
きちんと母を支えてくれていたのだろうか。
「ねぇ、私に出来る事ある?」
「美波ちゃんには…おじいちゃんの遺影に使う写真を探して欲しいの。
おじいちゃん…写真嫌いだったから、あんまり良い写真が無くて。」
「それなら、うちにある写真も探してみる?
私が小さい時に撮った写真がもしかしたらあるかもしれないから。」
「お願いできる?」
「うん。見てくるよ。」