第11章 目眩がするほど
「…片付け、俺が後でやるから。」
「いえ、もうすぐ終わるんで。」
ほんのりと赤く染まった頬。
20歳も離れているはずの佐久間さんを可愛いらしいと思ってしまうのは、恋のせいなのだろうか。
キッチンへとやってきた佐久間さんは、食器を洗い続ける私の身体を後ろからそっと抱き締めた。
首筋に柔らかな唇の感触を感じる。
こうして甘えてくれるのは、私に心を許してくれているからだろうか。
佐久間さんの手が、泡の付いた私の手に重なる。
そのまま指を絡め合い、蛇口から流れる水で泡を洗い流してくれた。
「…抱きたいんだけど。」
「今…からですか?」
「嫌?」
「嫌じゃないですけど。」
佐久間さんは濡れた手で私のエプロンの紐をほどいていく。
「…シャワー…浴びさせて下さい。」
「一緒に入る?」
「そんな…」
戸惑う私を抱き上げ、バスルームへと向かう佐久間さん。
先ほどまでお腹を抱えて笑い転げていたのが嘘のよう。
少し強引な佐久間さんの一面まで知る事になってしまった、最高の夜だった。