第11章 目眩がするほど
「そう言えばさぁ…俺、令志に“仕返し”に行った事ある。」
「え?俺に?“仕返し”って何だよ?」
「あれは、いつだったかな?」
高杉さんは古い記憶をたどり、必死で思い出そうとするがなかなか答えが出てこない。
「あれか?
“今日、令志の事ボコボコにしてやるから見てて”って言ってたやつか?」
ホットプレートに香ばしい匂いを漂わせながら、八巻さんが思い出したように手を叩いた。
「そうそう!!
いつもサクちゃんの後追っ掛けてくるチビが気に入らなくて。
俺の大好きなサクちゃんをとった“仕返し”をしようと。」
「初めて聞いたぞその話。」
「それで、いつものようにサクちゃんの後を付いて走ってる令志を後ろからバーンと殴ったの。」
「おい!!
あの時のって高杉だったのか!?」
「覚えてるの?」
「覚えてるよ!!
あれ、ずっと犯人分からなくてさぁ~。」
令志さんは飲みかけのワイングラスをテーブルへと置き、「この野郎~!!」と高杉さんを殴る真似をする。
「純平も横で見てたなら同罪でしょ?」と佐久間さんは楽しそうに笑った。