第11章 目眩がするほど
「こんばんは。」
そう頭を下げながらリビングへと入ってきたのはドラムの令志さんだった。
「初めまして。」と、精一杯の笑顔で挨拶を交わす。
ステージの上と同じ黒のタンクトップ姿。
スラリと伸びた腕には程よく筋肉がついている。
長い髪を一つにまとめ、爽やかな印象。
直視出来ずに戸惑う私の顔を見て、令志さんはフフッと笑ってくれた。
「ねぇ、先生もワイン飲むでしょ?」
高杉さんが赤ワインの注がれたグラスを手渡してくれた。
普段はあまり自宅でお酒を飲む事はないが、今日は特別だ。
「よし!!準備出来た!!焼こう!!」
八巻さんが大きなボールをリビングのローテーブルへと運ぶ。
「じゃあ、第130…回目だっけ?」
「133回目だね。」
「第133回the IVY主催もんじゃ焼き大会開会!!」
高杉さんの開会宣言のもと、楽しい宴が始まる。
「サクちゃん、良く覚えてるね?
俺、100回過ぎた辺りから数えられなくなったもん。」
「手帳に付けてるからね。」
寄り添うように隣へ座る高杉さんと佐久間さん。
相変わらず仲が良い。
私は手にした赤ワインを飲み込む。
アイヴィーのメンバーと5人だけで過ごすこの時間。
この時間がきっと、生涯の宝物になるだろうと確信した。