第11章 目眩がするほど
「よろしくね。」と八巻さんは握手をしてくれた。
「いや~、サクちゃん良いねぇ。」と、八巻さんはスーパーの袋に入った食材をキッチンへと運ぶ。
眩しいほどの笑顔。
ステージの上での八巻さんはいかにもROCK STARという佇まいだった。
それが今では下町の気の良いお兄さんのようだ。
「キッチン借りるね。」
「あ、はい。」
「包丁どれだっけ?」
「手伝います。」
手際良くもんじゃ焼きの下準備をする八巻さんの横でキャベツを切る。
「上手だね。」と楽しそうに笑う八巻さんに、緊張していた心が解されていく気がした。
「純平ね、実家がもんじゃ焼き屋なの。」
高杉さんがビールを片手に笑う。
通りで慣れているはずだ。
日本を代表するROCK STARの意外な一面を目の当たりにした。
何だか今日は楽しい日になるのではないかと胸が弾む。
「ワイン開けちゃおうかな。」と佐久間さんもいつにも増して笑顔が多い。