第11章 目眩がするほど
玄関のドアが開く音がした。
佐久間さんが帰って来たのだろう。
何やらにぎやかな声が聞こえてくる。
あの笑い方はベースの八巻さんか。
「ちょっとトイレ借りるね。」と、言ったのはドラムの令志さんだろう。
こうしてアイヴィーのメンバーがプライベートで4人揃う姿を見るのは初めてだ。
緊張からか、テーブルへとワイングラスを並べる手が震えている。
当然ではあるが、高杉さんはいつものように我が物顔でリビングをウロウロしていた。
私は…一体何を話せば良いのだろう。
私は一体どの立ち位置でこの集まりに参加すれば良いのだろうか。
アイヴィーのファン。
佐久間さんの恋人。
それとも料理を運ぶだけの空気のような存在になれば良いのか。
答えが分からないまま、リビングのドアが開いた。
「うおっ!!
初めまして!!八巻純平です!!
サクちゃんの親友です!!」
戸惑い立ち尽くす私へそう声を掛けてくれたのは、クルクルのパーマがトレードマークの八巻さんだった。