第11章 目眩がするほど
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「ねぇ、先生。
黒いワンピース綺麗だったよ。」
キッチンでサラダを作る私の隣で、高杉さんはいつものように缶ビールを片手に微笑んだ。
今日はアイヴィーのメンバーを呼んで“もんじゃ焼き”をするらしい。
まるで大学生ようなノリだと笑ったが、メンバー4人が同郷の幼なじみであるのだから、家族のような関係なのだと思う。
「ステージから見てたよ。
サクちゃんが先生の手の甲にキスするところ。」
そう言って高杉さんは水で濡れている私の手を取り、甲にキスをした。
まるで酔っぱらいの悪ふざけ。
「今、レタス洗ってるんで邪魔しないで下さい。」
そう言いながら高杉さんの手を払いのけた。
「今度はもっと激しいキスしてあげようか?
先生の一番“感じる”場所に。」
「結構です。
そんな事よりお皿取ってもらえますか?」
「どのお皿?」
高杉さんの“扱い”にもかなり慣れてきた。
毅然とした態度で接すれば、高杉さんはそれ以上の事は絶対にしてこない。
考え方によっては“紳士的”。
…いや、それは言い過ぎか。