第11章 目眩がするほど
信号を待っている時だった。
「美波?」
そう声を掛けられた。
聞き慣れた声。
振り向かずとも相手は分かる。
“俺達、結婚するから。
だから…もうお前とは会えない。”
そんなトラウマを私へと与え、浮気相手の女性と結婚した男。
「美波!!」
後ろから伸びてきた手に腕を引かれ、振り返る。
もう見たくもないと思っていた亮太の顔。
こんな所で会わなければいけないのなら、今日は大人しく帰宅すれば良かったと激しい後悔が胸を襲った。
「久しぶり。」
「…うん。」
「元気だった?」
「…私は元気。」
「そっか。
何かさ…お前雰囲気変わったな。」
「そう…かな。」
ぎこちない会話。
雰囲気が変わったのは亮太も同じだ。
2年前のクリスマスイブ。
最後に会ったあの日にくらべ、亮太はずいぶんとやつれているように見えた。