第11章 目眩がするほど
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「今日はちょっと遅くなるから。」
今朝、そう言って佐久間さんは家を出た。
裸でシーツにくるまっていた私は、重たい瞼を擦りながらベッドで見送った。
額に優しいキスをもらう。
愛しい愛しい私の恋人。
平日の夜の街は買い物をするにはちょうど良かった。
煌々とした光を放つショーウインドウ。
仕事帰りであろうスーツ姿の人が目立つ。
思いきって買った花柄のワンピース。
背筋がしゃんとするのを感じながら、ショッピングバックを肩にかけ、駅までの道を歩いていた。
“佐久間さんにふさわしい女性になりたい”
そう思うようになった。
もう何にも揺らぐ事のない強い女性になりたい。
もっと料理を覚えたい。
もっと仕事を充実させたい。
もっと佐久間さんを癒す存在になりたい。
そして…贅沢を言うのなら、綺麗になりたいとも思う。
2日前に行われたアイヴィーのライブで見かけた華やかな女性達に感化された…という単純な理由だ。
佐久間さんの隣にいても許されるような女性。
それが今の私の小さな夢なのかもしれない。