第11章 目眩がするほど
帰宅後、佐久間さんの作った夕食を食べ、私達はベッドで愛し合った。
刺激的なライブと甘い甘いセックス。
自分を取り巻くこの状況に、正直…現実味を感じない。
それでも、この一瞬一瞬を感じていたいと…汗ばむ佐久間さんの背中へと腕を回した。
重なり合う胸の鼓動。
自己否定を繰り返していたあの日の自分はもういない。
「橘先生、すっかり佐久間さんのファンになっちゃったんじゃないの?」
「ファン…ですか?」
「あんな事されたら恋に落ちちゃうよね。」
「…そうですね。」
“キス以上の事をしている”など、愛美先生には言えるはずがない。
私の恋人はthe IVYのギタリスト、佐久間俊二。
いよいよ愛美先生には打ち明ける事が出来なくなっていた。
「また早く観たいな。」
「そうですね。」
「次は新しいアルバムとかかな?」
「新曲…聴きたいですよね。」
「楽しみで眠れなくなっちゃう。」
まるで恋に恋する女子高生の如く、愛美先生は瞳を輝かせながら微笑んだ。