第2章 高校教師
薄暗いキッチンの横を通りすぎようとしたその時だった。
突然バスルームのドアが開いた。
私は驚き、思わず小さな悲鳴をあげる。
逃げ出すべきか、とどまるべきか…そうこう考えているうちに、ドアの奥から男が姿を現した。
「おかえり。」
濡れた髪をタオルでクシャクシャと拭きながら、男はそう言った。
私を見ても特に戸惑う様子もなく、まるで恋人の家にでも泊まったかのような振る舞い。
ただ呆然と立ち尽くしている私を男はじっと見つめている。
どう対応するべきか…考えれば考えるほど、このおかしな状況から逃げ出したくなった。
「した?」
男はそう口を開いた。
その意味が分からず、私は首をかしげる。
「昨日した?」
少し舌足らずで穏やかな口調。
男のその口調から、私に敵意を持っているようには感じなかった。
「“した”って何をですか?」
「セックス。」