第2章 高校教師
ドアを開けると、やはりキッチンの奥にあるリビングの照明がついていた。
玄関には男の靴がきちんと揃えられている。
今朝、私が部屋を出た時と同じ状態。
男は目覚めてからずっと、この部屋で過ごしていたのだろうか。
しかし、リビングに男の気配はなかった。
私は靴を脱ぎ、静かに部屋の中へ入る。
男はどこにいるのか。
突然の家主の帰宅に驚き、どこかで息をひそめているのだうか。
それとも寝室を物色しているのか…。
おかしな妄想ばかりが浮かんでくる。
男は細身ではあったが、身長は高い方であったはずだ。
もし襲われでもしたら、到底太刀打ち出来ないだろう。
何かあればすぐに逃げ出せるよう、部屋のドアは施錠せずにいた。
足音を立てぬよう、ゆっくりと部屋の中を進む。
これじゃまるで私が泥棒じゃないかと思うが仕方ない。
いくら自分の部屋とはいえども、見ず知らずの男と対峙するのは恐怖でしかないのだから。