第10章 まばたき●
隣の愛美先生が悲鳴にも似た黄色い声を出した。
愛美先生の予想通り、紫のシャツをはだけさせた高杉さんが目の前を通った。
ステージからこうして客席の近くまで来てくれるという事に感動を覚えた。
いつもいい加減だとばかり思っていた高杉さん。
変質者だと思う事すらあった。
相変わらず苦手な存在である事に変わりはないのだが、the IVYの高杉誠にはとても魅力を感じている。
高杉さんに触れようと手を伸ばす観客。
その横をすり抜け、色気のある表情を浮かべながら高杉さんはステージへと戻っていった。
その直後だった。
ステージ中央に戻った高杉さんと佐久間さんが美しく絡み合ったかと思うと、佐久間さんはステージ下手側へと…私達の前へとやって来た。
思わず顔を両手で包み、隠してしまった。
私の目の前で…佐久間さんは紫のライトを浴びながらギターソロを奏で始める。
指先の動きが分かるほど近くでギターを奏でる佐久間さん。
テレビなどじゃ分からい。
佐久間さんのギタープレイに胸が熱くなった。