第10章 まばたき●
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照明が落ちる。
一瞬にして沸き起こる歓声。
愛美先生に腕を引かれ、立ち上がる。
心を揺さぶるようなサウンドエフェクトとステージを照らす照明。
これから始まる“最高のROCK SHOW”。
期待に胸は高鳴る。
こんなにも緊張を感じた事は今まであっただろうか。
心臓の音がドクドクと強く鼓動を鳴らしていた。
サイケデリックな照明は暗転。
暗闇を切り裂くかのようなギターの音が聴こえた。
それに続き地を這うようなベースとドラムのビートが絡みだす。
今までイヤホンの中から鳴り続けていた音楽。
その音楽が今、目の前で生み出されている。
きらびやかな衣装にいくつものライトを受け、姿を現したthe IVY。
何て色気があるのだろう。
これが日本を代表するロックバンドの姿。
前奏が終わり、伸びやかな高杉さんの歌声が重なる。
私は…夢でも見ているのだろうか。
未だかつて感じた事のない感情。
頬を伝う涙を拭う事もせず、ただひたすらにステージを見つめ続けた。