第10章 まばたき●
「…似てるね。」
「え?」
「高杉によく似てる。」
「高杉さんにですか?」
「高杉もそうやってすぐ謝るの。
こっちは何も気にしていない事でも。
“ごめんね”“ありがとね”って。」
「そう言われてみれば…。」
「“いい加減”に見えて実は“お行儀が良い”みたいなね。」
「その例え…分かります。」
「高杉はさ、ああ見えて周りの人への気遣いを忘れないの。
仕事の時は特にね。
常にロックスターである自分を演じてる。」
似ていると言われたのには驚いたが、高杉さんは本当に人を魅了する不思議な力を持っている人だ。
下品さも今となってはただの愛嬌。
ロックスターとしての高杉誠には好意すら感じている。
「あっ…さっき高杉が来るって電話きてたんだ。」
「え?これからですか?」
「トマトパスタ食べたいんだって。」
「じゃあ、早く着替えないと…。」
慌ててソファーから起き上がり、お互い下着を身に付ける。
「実はまだトマトソース出来上がってないの。」
そう笑う佐久間さんの柔らかな笑顔に胸が締め付けられた。
私の中の大きな“劣等感”。
佐久間さんはそれすらも受け入れ、私を深く深く愛してくれた。