第10章 まばたき●
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きっと…私は“否定”され続けた自分の存在を、愛する佐久間さんによって“肯定”されたかったのだと思う。
ソファーの上、横になる佐久間さんの身体に覆い被さるように寄り添う。
冷えた身体に白いシャツを掛けただけ。
窓の外を眺めながら、ただ裸のまま抱き合っていた。
「…ごめんなさい。」
「何で謝るの?」
「何だか…自分本位でした。」
「自分本位?俺もしたかったから良いんだよ。」
優しく髪を撫でる佐久間さんの胸に頬を寄せる。
乱れていた心を、佐久間さんの心音へと重ね合わせるかのように整えた。
しかし、頭の中には高杉さんが言っていたあの言葉があった。
「the IVYのギタリスト、佐久間俊二が彼氏ってどんな感じなのさ?
“優越感”みたいな?」
「じゃあ、不安?
モテモテのサクちゃんをテレビで観て嫉妬しちゃうとか?」
“優越感”と“嫉妬心”。
やはり今の私には無縁だと思う。
先ほど感じた佐久間さんに対しての強い“独占欲”。
それはきっと…“優越感”や“嫉妬心”などからではなく、自分への強い“劣等感”からだった。