第2章 高校教師
鍵を開け、ドアノブへと手をかけた時だ。
ふと視線を向けた先にあったキッチンの窓。
その窓からわずかに明かりが漏れている事に気が付いた。
誰もいないはずの部屋、曇りガラスの向こう側に目をこらす。
それはキッチンの奥にあるリビングの明かりのようだった。
今朝、部屋を出る時に消し忘れたのだろうか。
いや、朝は窓から差し込む日の光で十分な明るさだった。
消し忘れなどではないだろう。
まさか…
昨日の男がまだ部屋の中にいるのだろうか。
さすがにもう帰ったとばかり思っていたが、それ以外は考えられない。
見ず知らずの男を部屋にあげて泊まらせたのは自分なのだが、ここまで長居されるとさすがに恐怖心がわく。
もし部屋の中を物色されていたら…。
そんな妄想さえしてしまう。
私は音を立てぬよう、ゆっくりとドアノブを回す。
自分の部屋のドアを開けるのに、なぜこんなにも緊張しなければいけないのだろうか。
全ては昨日の夜、“普段の自分からは想像も出来ない行動”を起こしてしまったせいだ。