第10章 まばたき●
唇の感触を確かめるかのように、何度も何度もキスを重ねた。
舌先を絡め、ゾクゾクとする快感に身を委ねる。
佐久間さんのキスは甘く激しい。
私にとっては心を強く揺さぶられる媚薬のような味だ。
クチュクチュと唾液の絡まる音に心臓の音が強く鼓動を打つ。
「…待って。」
佐久間さんはそう言いながらエプロンを外すと、赤く染まっているであろう私の頬を両手で包んだ。
エプロンを外したという事は…キス以上の事を期待してもいいのだろうか。
帰宅してろくに会話も交わしていない。
こんな不甲斐ない私を…佐久間さんは受け入れてくれるのだろうか。
そっと舌を差し出し、佐久間さんの口内へと滑り込ませる。
舌と舌で熱い抱擁を繰り返した。
何て淫らなのだろう。
荒ぶっていた心が徐々に落ち着きを取り戻すような感覚。
今はこうして佐久間さんの腕の中、ただ…その行為に夢中になりたかった。