第10章 まばたき●
「キスしよう?」
佐久間さんのエプロンをつかみながら、そうせがんだ。
頬がほんのりと熱くなるのが分かったが、披露宴で振る舞われたシャンパンのせいなどではない。
濡れた瞳をした佐久間さんは、優しく私の髪を撫でる。
その手は徐々に私の頬へと移動し、親指で唇をなぞった。
フフっと笑いながら、佐久間さんは優しいキスをくれた。
じんわりと身体が熱くなる。
唇をそっと触れ合わせるだけのキス。
いつもはそれでも充分心が満たされた。
しかし、今日は違う。
もっと…佐久間さんと繋がっていたい。
離れていく佐久間さんの唇を追うように、もう一度キスをした。
「もっと…して。」
ささやくような私の言葉をさえぎり、佐久間さんは激しく唇をふさいでくれた。
唇を割り、舌をねじ込んだのは私からだ。
背伸びをし、必死で佐久間さんの唇を奪い続ける。
気が付けば、佐久間さんのエプロンを強く握り締めていた。