第10章 まばたき●
本来であれば、この席に座っていたのは亮太だったのかもしれない。
それなのに、空気を読まずに私が出席してしまった…。
私は…何て愚かなのだろう。
ただ、うつむく事しか出来なかった。
隣の席からは私への嫌悪感を痛いほど感じる。
早く式が始まってほしい。
これ以上、佐々木さんと会話をするのは耐えられない。
その時だった。
重苦しい空気を破るかのように、私の左隣へと座った女性が大きな声をあげた。
「え!?橘さん!?」
目を丸くしている水色のワンピースの女性。
その女性も、名前は思い出せぬが大学時代の同期だった。
「何か…綺麗になったね。」
「いえ…そんな。」
「化粧してるの初めて見た。」
ぎこちない応えしか出来ない私の顔を、まじまじと見つめながらそう言う。
助けてもらえた。
ホッとして胸を撫で下ろす。
しかし、そんな私へと再び佐々木さんのトゲのある言葉が飛んできた。
「でも、橘さんは橘さんだよね。」
「そうだよねぇ。」
二人は手を叩きながら大きな声で笑い出す。
何て…不快なのだろう。
二人は私を間に挟み、お互いの近況を交えた自慢話を始めた。