第10章 まばたき●
「何ニヤニヤしてるの?」
「ニヤニヤなんて…。」
「相変わらず感じ悪いね。」
曖昧な私の態度に苛立つ表情…。
私はなぜこんなにも詰められているのだろうか。
今日は同期の結婚式。
温かい祝福の雰囲気とはあまりにもかけ離れている。
「亮太の結婚式、素敵だったなぁ。」
「…そうなんだ。」
「奥さんも美人だったし。
私、超仲良くなったんだよね。
子供の写真とか送ってくれるし。」
「…そう。」
「本当は今日も来たかったんじゃないかな?」
「え?」
「だって、橘さんより亮太の方が“うちら”と仲良かったもんね。」
返す言葉が見付からなかった。
確かにその通りだ。
明るく気さくな亮太は男女共に人気があった。
言われてみれば、この場に亮太がいないのは不思議だった。
佐々木さんも、今日の主役である新婦も…見渡せば亮太の友人ばかり。
「新婦にまで気を使わせるなんて、“さすが”橘さんだね。」
黙りこくる私へ、佐々木さんは冷たい口調で言い放った。