第10章 まばたき●
質問攻めにされ、私は思わずたじろぐ。
そんなに気になるものなのだろうか。
特に親しくもなかった私の事など…。
「もしかして、みんなに見せたくてわざわざ送ってもらったの?」
「…違うよ。」
「見せつけたかったんでしょ?」
「私はそんな…。」
そんなつもりは微塵も無かった。
そもそも式場まで送迎をしてくれると言ったのは佐久間さんだ。
確かに佐久間さんの所有している車には今でも驚く時がある。
普段乗っているベンツの他に、フェラーリをはじめとする高級外車が数台。
「音楽と同じくらい車が好きなの。」と少年のような顔で笑う佐久間さんを思い出す。
以前、リビングのテーブルに車の雑誌が置かれていた事があった。
夕食を食べに来ていた高杉さんは、その雑誌を見付けるなり「これはサクちゃんにとっての“エロ本”だから。」とからかっていた。
「やめてよ~。」と微笑む佐久間さん。
今の私にとっては、それがほんの日常の一コマになっていた。