第10章 まばたき●
「ねぇ、さっきの“フェラーリ”って彼氏?」
「え?」
「車で来てたよね?」
「あ…うん。」
「運転してたの誰?彼氏?」
「えっと…。」
突然の問い掛けに私は言葉を濁す。
佐久間さんの事を聞いているのだろうか…。
the IVYのギタリストである佐久間俊二の車になぜ私が乗っていたのか…そういう意味なのか。
「亮太と別れてヘコんでると思ってたのに、もう“高収入”の男見付けたんだ?」
「え?」
「あんな車に乗ってるんだから、それなりに“成功してる人”なんでしょ?」
腕を組みながらため息まじりに吐かれたその言葉にはトゲがあった。
突き刺さるような佐々木さんの視線。
佐久間さんを知っている…という訳ではないようだ。
なぜ今さら亮太の名前を出されるのかと驚いたが、大学時代の同期であれば私達の関係を知っているのも当然だ。
「他に車何乗ってるの?」
「え?」
「経営者?」
「いえ…。」
「どこで知り合ったの?」