第10章 まばたき●
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テーブルに着き、席次表をパラパラと眺めていた。
新郎新婦のプロフィールのページにあった同期の写真。
どこか旅行へ行った際に撮った物なのだろうか。
あまりにも幸せそうな笑顔の二人に、思わず私の頬も緩む。
披露宴は午後2時からだった。
神前式は親族のみで行われたようだ。
黒髪の同期には和装がとても良く似合うだろう。
その時だった。
「ねぇ、橘さん?」
名前を呼ばれて顔を上げると、一人の女性がこちらへと近寄って来た。
黒のセットアップに大ぶりのアクセサリー。
何となく見覚えはあるが、名前は思い出せない。
女性は私の隣の席へと座った。
「久しぶり。
何か感じ変わった?」
「あっ…そうかな。」
「うん。最初気付かなかったもん。」
女性はそう笑う。
私は「そうなんだ。」と相づちをうちながら、チラリと席次表に視線を落とす。
私の右隣…“佐々木静香”。
女性の名前を確認するも、大学時代の同期というだけで特に親しかったという記憶は無い。