第10章 まばたき●
◇◆◇
自然と音楽には詳しくなった。
…人並み程度にだが。
佐久間さんと高杉さんの会話も、今ではわりと飲み込めるようになった。
それはきっと、高杉さんのフォローのおかげもある。
「俺達が学生の頃はさ、ラジオからカセットテープに録音して…」
「レコードってね…」
「“デヴィッド・ボウイ”は…」
必ず私にも分かるよう補足をしてくれる。
その隣で「うん。うん。」と楽しそうに微笑む佐久間さん。
時々ではあるが、三人で過ごす夕飯の一時が私にはとても大切な時間となっていた。
鏡に向かい、大きめのピアスを着ける。
緩めに巻いた髪。
紺色のワンピース。
今日はいよいよ大学時代の同期の結婚式だ。
あっという間に季節は過ぎ、初夏の陽気が漂う。
同期の花嫁姿を想像し、胸は高鳴る。
式場までは車で40分ほど。
偶然、休暇を取っていた佐久間さんが送迎をしてくれるそうだ。