第2章 高校教師
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降車ボタンの音に目を覚ました。
慌ててバスの車窓から外を見る。
薄暗い街並み。
ぼんやりと窓ガラスに映る自分の顔は、ひどく疲れているように見えた。
あと5分もすれば、いつもの停留所に着くだろう。
背もたれに預けていた眠い身体を起こす。
明日は土曜日。
今日は早くベッドに入ろう。
そんな事を思いながら、小さく伸びをした。
放課後、彼女とは特に立ち入った話をする事はなかった。
簡単に心を開いてくれるなどとは思っていなかったが、彼女の顔が微笑んだように見えた時には、わずかながら期待を持ってしまった。
タバコを1本吸い終えると、彼女は「さようなら。」と軽く頭を下げ、屋上を後にする。
「また明日。」
「明日は土曜日です。」
「じゃあ、来週。」
「………はい。」
静かに閉まる屋上の扉。
彼女の胸の内を知る事は出来なかったが、彼女と時間を共有出来た事には大きな意味があるように思えた。