第10章 まばたき●
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マンションのエレベーターの中。
上層階へ向かってカウントされていく数字を見ながら、ぼんやりと彼女の事を考えていた。
小松加奈。
放課後の職員室の窓から、彼女が朝倉さんと下校していくのが見えた。
今日は部活が休みだったのか。
バレーボール部である朝倉さんと部活動をしていない彼女。
下校途中、どこかへ寄り道をしたのかもしれない。
高校生が行きそうな所…ファストフード店か小洒落たスイーツ店、カラオケや商業施設。
どれも彼女には不似合いの場所のような気がした。
彼女は…大人の雰囲気漂うカフェの窓際で静かに本を読むのが似合っている。
ガチャガチャと騒がしい雰囲気は似合わない。
エレベーターを降り、鞄から鍵を取り出す。
私は…一体何を考えているのだろう。
彼女と朝倉さんとの仲に嫉妬しているとでもいうのだろうか。
私は彼女を…彼女の恋を傍観すると決めたはずだ。