第10章 まばたき●
こうしてアイヴィーの曲を聴くようになり、気付いたのは高杉さんの書く独特な世界観の歌詞だ。
メロディーの良さは当然ながら、高杉さんの紡ぐ言葉には心を惹き付けられる良さがある。
プライベートではただの変質者だと思っていたが、アーティストとしての高杉さんにはとても魅力を感じていた。
愛美先生が夢中になるのも納得。
歌詞カードに写る高杉さんの姿は浮世離れした美しさもあった。
「アルバムの次はライブDVDを観てほしいな。」
「はい。私も観たいです。」
「解散前にリリースされたライブDVDがBOXになって発売されたばかりなの。
橘先生にはそれを貸してあげるね。」
「ありがとうございます。」
「本当は生でアイヴィーのライブを体感してほしいんだけど…チケット当たるかなぁ。」
「ライブ…ですか?」
「そう。
6月に武道館でライブがあるんだけどね。
一応申し込んではいるんだけど、結果待ちなんだ。」
6月の武道館。
先日、高杉さんが言っていたあのライブの事だろうか。
“先生のために関係者席押さえておくから。”
そう言っていたが、まだはっきりとした返事はしていなかった。