第10章 まばたき●
「橘先生、昨日のアルバムはどうだった?」
「とても素敵でした。
今までのアルバムの中では一番好きです。」
「やっぱりそう思う?
あのアルバムでアイヴィーは初のオリコン1位を獲ったからね。」
「そうなんですか。」
「そうなの。
私が初めてライブに行ったのも、あのアルバムのツアーだったんだぁ。」
瞳を輝かせながら愛美先生はため息まじりにそう話す。
愛美先生からはアイヴィーのアルバムを一枚ずつ借りていた。
「一枚のアルバムをしっかり聴いてほしいから一枚ずつ貸すね。」と、愛美先生は言っていたが、私にとってもその方が都合が良かった。
佐久間さんが仕事で遅くなる日や休日には、イヤホンをしながら歌詞カードを眺めていた。
一曲一曲を大切に聴く。
まるでプレゼントの包み紙を開ける時のようなときめきを胸に、再生ボタンを押していた。
心踊る瞬間。
今の私にとっては、とても大切な時間だ。