第10章 まばたき●
「ただいま。」
「サクちゃんおかえり。」
顔をクシャクシャにほころばせながら、佐久間さんが帰宅した。
高杉さんがいた事が嬉しかったのだろう。
二人は顔を見合せ、微笑み合う。
さっきまで仕事で一緒にいたはずなのに、まるで恋人同士のようだ。
「ワイン開けちゃおうか。」
「もちろん。
そう思ってサクちゃんの所に来たんだから。」
私は食器棚からワイングラスを取り出し、高杉さんに手渡す。
こんな事なら、もう少しワインに合うメニューにすれば良かったか…。
佐久間さんはコートを脱ぐと、ワインセラーの中からワインを選び始めた。
「カレーにワインって合うんだよ。」
佐久間さんはそう言って笑う。
「サクちゃんはカレーとワインがあれば生きていけるもんね。」
「いや、ワインは無くても我慢出来そうだけどカレーは無いと無理かも。」
楽しそうに話す二人を横目に、私は急いでカレーを作った。