第10章 まばたき●
「出汁がでて美味しいんですよ。
それに…刺身はいつでも食べられるじゃないですか。」
「ねぇ、もしかして先生って北海道出身?」
「あ…はい。」
「やっぱり。
北海道の人は海産物、食べ慣れてるからさ。
アレンジして食べようとするんだよね。
初めてホタテフライ見た時、喧嘩になったもん。
刺身で食べたかったのにって。」
そう、すねた表情を浮かべる高杉さんが何だか可愛いく思えた。
高杉さんの言う通り、実家の母もよくホタテフライを作ってくれた。
生食用のホタテにわざわざ火を通すというのは、東京の人には理解し難いのかもしれない。
「北海道の人ってさ、赤飯は甘納豆なんでしょ?」
「それは地域差があります。」
「アメリカンドッグに砂糖つけたり。」
「道東の方はそうですね。」
なぜ高杉さんが北海道のグルメに詳しいのかは謎だが、昔ライブツアーででも行ったのだろうと思う。
「カレー美味しく作ってね。」
「分かってますよ。」
今日もここで食事をしていくつもりなのだろう。
キッチンに立つ私の横で、高杉さんは鼻歌を歌いながら缶ビールを開けた 。