第2章 高校教師
そんな私を、彼女はただじっと見つめていた。
私の行動にあきれてしまったのか。
彼女は何も言う事なく、どこか府に落ちないといった表情を浮かべている。
生徒からタバコをもらう教師など言語道断だろう。
きっと彼女の目には“頭のおかしな教師”に映っていたに違いない。
「…タバコなんて大嫌い。」
そうポツリとつぶやく私に、彼女は不思議そうに首をかしげた。
「じゃあ、何で吸ってるんですか?」
「何でだろうね。」
「ふざけてるんですか?」
「ふざけてなんていないよ。」
「誰かに見られたらどうするんです?」
「誰かって?」
「生活指導の村瀬先生…とか。」
「あなたも昨日吸ってたじゃない。」
「それは…。」
「吸いたかったら、あなたも吸えば?」
彼女は少し考える素振りを見せたが、ゆっくりとポケットからタバコを取り出した。
ライターを手渡すと、口に加えたタバコに火を着ける。
やはり、その仕草は大人の私よりも様になっていた。
そんな彼女の唇から吐き出されたタバコの煙は、柔らかな風に流されて消えていった。