第9章 甘い嘘●
「…美波?」
突然、佐久間さんの力強い腕に抱き寄せられた。
驚いた私は小さな悲鳴をあげ、佐久間さんの胸に倒れこむ。
ドクンドクンと鼓動は早まり、身体は熱くなっていく。
甘くスパイシーな香りがする佐久間さんの胸。
キスをして起こしてしまったのか。
何ともばつが悪いが、こうして抱き締めてくれた事が純粋に嬉しかった。
「…起こしちゃいました?」
「うん。」
「…何の連絡もしないで、すみません。」
「うん。」
「…待っていてくれたんですか?」
「うん。」
まるで甘えた子犬のような声で佐久間さんはそううなずくばかりだ。
普段ならば「大丈夫だよ。気にしないで。」とクシャクシャの笑顔を見せてくれるが、今日は少し様子がおかしい。
「…どこにも行かないでよ。」
そう言いながら、佐久間さんは私の身体をきつくきつく抱き締めた。