第9章 甘い嘘●
リビングのドアを開けると、暗い部屋の中でテレビが煌々とした光を放っていた。
バラエティー番組だろうか。
最近良く目にする女性タレントが料理を作っている。
佐久間さんが消し忘れたのだろうか。
ローテーブルの上にはワインボトルとグラスが置いたままになっていた。
佐久間さんが一人でワインを開けるのは珍しい。
佐久間さんも私と同様、この状況に戸惑っていたのかもしれない。
テレビを消そうと、ローテーブルの上にあるリモコンへと手を伸ばした。
その瞬間、人の気配を感じて身体を強張らせる。
テレビと向かい合うように配置されたソファー。
そのソファーでは佐久間さんがコロをお腹に乗せたまま眠っていた。
一体いつからここで眠っているのだろう。
電気もつけずに一人で飲んでいたのだろうか。
ベッドで眠れば良いものを…
毛布も掛けず、静かに寝息を立てている佐久間さんを見ていると出会った日の事を思い出した。