第9章 甘い嘘●
興奮気味に話す二人が何だか面白く見え、思わずふふっと笑ってしまった。
そんな私に気付き、愛美先生は少し恥ずかしそうに微笑む。
「橘先生、ごめんね。
私達、アイヴィーの事になるとテンション上がっちゃうの。
でも、それだけ夢中になれる音楽があるって素敵な事だと思う。
私もこんなに長い間ファンでいるバンドなんてアイヴィー以外に存在しないもん。」
愛美先生の横でユカさんは大きくうなずく。
「うちら、もともと洋楽しか聴かなかったんだよね。
だからテレビで初めてアイヴィーを聴いた時は衝撃だったんだ。
ヴィジュアルの良さはもちろんだけど、鳴らしてる音が日本人とは思えなかった。
往年の洋楽ロックのオマージュと言ってしまえばそれまでなんだけど、当時って“分かりやすいJ-POP”が主流だったからアイヴィーの音楽は異彩を放ってた。
それでもきちんと日本人の琴線に触れるような音楽っていうのがアイヴィーの凄みだよね。」